福島原発事故の 「 ガレキ処理 」 と 「除染 」 を 考える
日本科学者会議 滋賀支部が 5月19日、草津市立市民交流プラザで開催した 「 原発関係連続講演学習会 」。
元福井大学教授の山本富士夫氏が講演した後、 質疑応答 が 行われました。
この中で、 福島原発事故のあと 行われている「 ガレキ処理 」と「 除染 」 についての質問が出されました。
これに対し、 元 大阪市立大学教授 の 畑明郎氏 が 次のように 説明しました。
「 ガレキの広域処理 」 に ついて
現在、 高島市の焼却 と 近江八幡市の埋め立て が 問題になっている。
放射性物質を含むガレキは、 セシウムの沸点 ( 760度 ) 以上の高温で燃やすと セシウムが 空気中に 放出される。
現在、 ゴミ焼却場は 900度以上、 高島市では 1200 〜 1300度で 燃やしている。
セシウムを取り除けるような細かいフィルターをつけると防げるが、すぐに詰まってしまい 焼却炉が 使えなくなる。
だから 粗い目のフィルターになり、 セシウムを 全部取り除くことは 出来ない。
つまり、焼却場からセシウムが 大気中に放出されることになる。
さらに、 燃やす段階で、 焼却場の中が 放射能で汚染されるので、 焼却灰も 汚染される。
集塵器 ( フィルター ) で 取り除いた焼却灰も、放射能濃度 が 数十倍も 高くなる。
だから、 作業員も 大変になるので、 受け入れない方が いい。
海に矢板を立てて埋め立てている 「 フェニックス 」 も、下が抜けているので 海に漏れる可能性がある。
近江八幡市の埋立地は 琵琶湖から 2キロしか離れていないので 琵琶湖より低く、 地下水を ポンプで 琵琶湖に 排水している。
セシウムは水に溶け易いので、 雨が降ると セシウムが地下水に浸透していき、 排水施設で 琵琶湖に 排水される。
この排水処理施設には、セシウム処理の装置をつけていないので、セシウムがそのまま琵琶湖に放流されるのである。
岩手、宮城のガレキに は 汚染物質 が 入っている。
広域処理に出される石巻地区のガレキは 100ベクレル以上、 焼却灰は 数千ベクレル と 放射能が高い。
だから、 広域処理は 問題が多く、ガレキ処理、処分 は 現地で行うのがいい。
今、 石巻で 焼却プラントが 5基あり、1基が 動き出した。
燃えない物は 防潮堤に使うなどして、 国が現地での処理、処分 を 支援すべきだ。
ガレキを全国にばら撒くと、 輸送費だけで 約2000億円、 全体で 約1兆円かかる。
こんな無駄な金を使わずに、 現地にプラントを作り、 分別して処理すれば、 現地の雇用も うまれる。
阪神淡路大震災のガレキは 2000万トンで、 3年以内に 現地で 処理できた。
今回の東日本大震災のガレキは 2300万トン、
放射汚染が高く広域処理に出せない福島のガレキを除くと、宮城と岩手のガレキは阪神淡路大震災のガレキより少ない。
だから、現地で処理できない量ではない。あくまで、現地で 時間をかけて 処理すべきだ。
また、ガレキを 「 災害廃棄物 」 と 言っているが、 中味は 「 産業廃棄物 」 に 近い物です。
これを 「 一般廃棄物 」 と 同じように ゴミ焼却場 で 燃やしたり、 一般ゴミ処分場 で 埋めたりしては 駄目なんです。
今の廃棄物処理法では、 産業廃棄物 と 一般廃棄物 は ちゃんと分けて 処理することに なっている。
そういう仕分けが 無茶苦茶に なっている。
今回の広域ガレキ処理は、 従来の廃棄物処理の法体系から見れば 違法だと 言っている人もいます。
確かに、 超法規的に やっているんです。
「除染」について
イタイイタイ病では、 900ヘクタールの土壌復元 に 33年間 かかった。
これに 400億円 かかった。
深さ30センチの土を取り除き、 数メートルの穴を掘って埋めた。
こうして 汚染されていない層を 40センチ作ったわけです。
福島の汚染農地は、 おそらく、 この100倍の広さがある。
深さ 5センチくらい取り除いても 、耕すと駄目になるので、
15センチ か 20センチ の土を 入れ替えなければならない。
こんなことをしていると、 100年 は かかる。
これは お金の無駄遣いになるので、 私は 「 除染は できない 」 と 思っています。
建物を除染すれば、 汚染水が 川に 流れ 海を汚す。
土や建物の除染をしても、 これは 「 除染 」 でなく 「 移染 」 で、 汚染物質を移動させるだけで、 完全な 「 除染 」 は 難しい。
まして、 山林は もっと出来ないし、 農地でも 難しい。
この除染は 全部、大手ゼネコ ンの 請け負いです。
除染 に 何十兆円もの お金を使うより、 一時的に 全部 避難したほうがいい。
法定の 1ミリシーベルトを超えている地域に、 福島県民200万人のうち 150万人が 住んでいる。
おそらく 5ミリシーベルトの放射線管理区域の中に 100万人 くらい 住んでいる。
放射線管理区域は、その中で飲食したり、寝たり、子どもが入ってはいけないという病院のレントゲン室のような所です。
そんな所に住ませて、 政府は 危険性を知らせない。
そういう所は 一時避難させ、 その避難に対して 保障するべきです。
セシウム134 は 2年で 半減する。
セシウム137 は 30年で 半減する。
半分くらいはセシウム134なので、 全体では 10年位で たぶん半分以下に なる。
こうして 数十年経ち、 セシウム濃度が下がった段階で 戻る。
当然、戻れない地域が 一部で 残るが、 大抵の地域が 戻れるようになる。
だから、 避難を優先して、 除染に使う金があれば、避難者の生活保障にまわすべきだ。
ガレキも除染も利権がらみになっている。
広域ガレキ処理で儲かるのは、 産廃業者より、 むしろ 輸送業者だ。
JR貨物の社長が 「 広域ガレキ処理に期待する 」 と 日経新聞に 書いていましたし、
実際に、 宮城のガレキを コンテナに入れて東京に運んでいるのは JR貨物です。
その下請け会社は、 東京電力の子会社です。
そういう とんでもない構図に なっています。
除染も、 日本原子力開発機構という原発を推進してきた機関が、お金を出して ゼネコンに委託してやろうとしている。
原発事故を起こした連中が 、除染ビジネス と ガレキ処理 で また 儲けようとしているのです。
畑明郎氏の 「 ガレキは 日本中にばら撒かずに 現地で処理 ・ 処分を 」 と 「 除染に使う金を 避難者の生活保障に 」 と いう主張を聴き、
これまで 「 何か おかしい 」 と 思っていたことが、すっきりしました。
それにしても、原発を推進してきた 「 原子力むら 」 の 連中が、 今度は ガレキ処理 と 除染 で 大儲けしようとしていることは 許せないことです。
また、そのお膳立てをしている高級官僚 も しかりです。