「 障害者運動に階級的視点を ! 」
昨日から大津市の 「 びわ湖ホール 」 を 中心に開かれている 「 きょうされん全国大会 」 には、 全国から2500人が 参加しています。
大会では、 多くの分科会毎に 熱心な議論が行われていますが、その中の 「 政策運動の分科会 」 では、重要な提起が行われました。
熊本学園大学の高林秀明准教授は 次のように問題提起をしました。
自立支援法廃止と新法制定を取り巻く状況は 非常に厳しい。
政府の社会保障 ・ 社会福祉政策の基本スタンスが 全く変わっていないからだ。
障害者運動は これまでの枠を超えて 連帯の基盤を広げていく必要がある。
そのためには、 運動が取り組む課題とは何かを、 改めて現実から しっかりつかむ必要があるのではないだろうか。
「 総合福祉法の骨格提言 」 の6つの目標は、いずれも障害者だけに限らず、 広く労働者とその家族に当てはまることであり、
とくに 不安定雇用者や自営業者、無業の年金生活者などの不安定層に 共通している。
また、 地域的には絶対的不足の上の格差といえるが、 地方都市やさらに周辺地域 ( 過疎 ・ 離島 ) などでは 障害者とその家族だけの課題ではない。
骨格提言は、 「 障害のない市民との平等と公平 」 「 格差の是正 」 などを目指すとするが、 何が不平等と格差をもたらすのか。
不平等と格差のクサビは、 障害のある市民とない市民の間に打ち込まれているのか。
それとも、同じ労働者階級の間に打たれているのか。
骨格提言の目標 ( 平等と公平を実感できる新たな社会 ) を実現するためには、
一度、 障害のない市民との共通課題 ( 普遍性 ) を 掘り起こすこと、
経済 ( 大資本 ) に踏みつけられてきた地方における労働 ・ 生活条件の共通性を明らかにすることが 必要ではないだろうか。
属性 ( 子ども、 若者、 高齢、 障害がある人 、障害がない人など ) で分けて考えるのではなく、
お互いにつながっていくためのカギは、 自らの労働によって暮らさざるをえない労働者と その家族という共通基盤 ( 階級性 ) にあると考える。
ヨーロッパの福祉国家は、 労働者たちが社会保障制度を守り、拡充するために、ストライキやデモに取り組んでいる。
彼らの要求は、 日本のような企業内の正社員の賃上げではなく、 最賃引き上げや 労働時間短縮、 年金制度拡充などの制度闘争である。
今日、 自立支援法廃止 ・ 新法制定以外の、 年金、 医療、 介護保険、 保育などの社会保障は、 国と大企業の責任と負担を 後退させる動きしかない。
全労連や自治労連などの労働組合運動に対して、 社会保障運動を位置づけさせるために 、障害者運動からの働きかけが必要ではないだろうか。
そして、 労働運動の中に障害者運動を位置づけたい。
「 福祉も 、雇用も 」 の呼びかけに あいまいさはないか。
無権利労働を拡充する手段として歪められている社会保障を 立て直すことが急務であり、
労働組合運動に 社会保障 ・ 社会福祉の制度闘争に取り組ませるためには、
まず 職員自身が 労働者として自らを組織して労働者の権利に目覚めなければならないだろう。
それが、 総合福祉部会の提言を実現させる条件である。
このことは、 単に「 骨格提言 」 にある報酬と人材確保という課題にとどまらない。
どういう社会を目指し、 誰が国や政策をつくるのかという、 社会のあり方と民主主義にかかわる課題である。