「 KBS滋賀局を市民の手に! 〜 9 ・ 25 の 集い 〜 」
中川むつ子さんが代表を務める「KBS滋賀リスナー会議」と京都放送労働組合は昨日9月25日、
彦根市内で「KBS滋賀局を市民の手に 〜9 ・ 25の集い〜」を開き、
地域の放送文化を発展させるためにも、市民と放送労働者が協力してKBS滋賀放送局を守り育てていこうと確認しました。
この集会には、年金者組合員10人も参加しました。
主催者を代表して「KBS滋賀リスナー会議」の中川むつ子代表が次のように挨拶しました。
私は、福井県の実家に帰り、彦根に戻って来た時、陸橋の上からKBSの看板を見ると、
「ああ、彦根に帰ってきたなあ」と、ほっとします。KBS滋賀放送局が「彦根の象徴」のように思えるのです。
これまで、彦根で住民運動や文化活動をする中で、KBS滋賀の番組で
母親大会や映画サークル「ひこねシネマクラブ」等を度々、紹介していただき本当に感謝しています。
その放送局が閉鎖されそうと聞き、「これは大変だ、地域の文化や活動を伝える機会がなくなってしまう」ということで、
「KBS滋賀リスナー会議」を立ち上げました。
これからも、放送局で働く皆さんと私たち市民が力を合わせて、
KBS滋賀放送局を守り発展させていきたいと思っています。
続いて、放送作家の石井彰氏が「地域社会にとってラジオ局は必要だ!」と題し講演しました。
講演の要旨を紹介します。
私は今57歳で、中学2年の時に深夜放送を知り、学校から帰ると先ず昼寝して深夜放送を聴くという青春時代を過ごしました。
ところが今は、ラジオを聴く人がとっても少なくなりました。
昔はラジオの聴取率は30%とか40%ありましたが、最近は首都圏の調査で6・1%でした。
「君の名は」というラジオドラマを放送している時間は銭湯がカラになるという時代がありましたが、
その後、テレビが生まれ、インターネットが生まれてラジオを聴く人が少なくなってしまいました。
しかし、東日本大震災では、停電したり防災無線が故障したりして、
ラジオだけが唯一、住民を守るメディアとなり、
ラジオによって助かった人がたくさんいらっしゃいます。
そういう意味で、ラジオは大事なメディアです。
また、史上最低の6・1%まで落ちこみました。
今、どこのラジオ放送局でも、広告収入が減ったために、番組制作費を減らし、人件費も減らしています。
昔のディレクターは、映画を観に行ったり、コンサートに行ったり、飲み屋に行き話し合ったりして、
皆が何を考えているか、どういう番組を作れば聴いてもらえるか、よく考えていました。
しかし、今はそんなゆとりが無く、朝から晩までラジオ局に居る。
社会のことなんか解る筈がない。
当然、番組の質が低下します。
番組の質が低下すると、ラジオを聴く人が減り、スポンサーが広告を出さなくなります。
1991年には、全国のラジオ局の売り上げが2406億円ありましたが、
昨年は、1247億円、20年間で大体、半分になりました。
このまま行くと、後20年経つと、さらに半分の600億円位になると予想されています。
そうなると、人数も半分になるという、大きな時代の流れがあります。
しかし、改善する方法が無いかといえば、そんなことは無い。
簡単なんですよ。
「負のスパイラル」を「正のスパイラル」にするには、どうすればいいか。
番組制作費と人件費を増やせば、番組の質が上がり、ラジオを聴く人が増え、スポンサーが増える。
すると、さらに番組制作費を増やすことができ、番組の質が上がる。
ところが、このことを考えているラジオ局の経営者は1人もいません。
みんな自分のことしか考えていないから、とにかく「経費削減」しか考えていません。
どんな業界でも衰退した時には新しい商品を開発するが、ラジオの業界だけはそれをやらない。
不思議な業界ですね。
今、ラジオに求められているのは、
「聴きやすい」、「わかりやすい」、「共感と発見があって楽しい」、「突っ込んだ取材」です。
もう一つ大切なことは「ラジオは聴く」だけでなく、「参加して出演する」ものです。
さらに、「ラジオは支える」ものです。
ラジオは今、苦しい状況にあります。
そういう中で、みなさんお1人おひとりがラジオを支えていくことも大事じゃないでしょうか。
今、仮にKBS滋賀のスタジオを家賃の安いところへ移してしまうと、次は「閉鎖」ということになります。
いったん、「縮小」が始まると、これは果てしなく続きます。
どっかで、踏ん張って意地でも頑張らないと、とめどがなくなってしまう。
今、KBSだけでなく、全国のラジオ局で支局を無くしています。
ラジオだけでなく、テレビ局や新聞社も、海外の支局を減らしています。
そうすると、現地の情報が減り、現地の人の気持ち、文化が解らなくなります。
そこで、滋賀県内各地の情報をちゃんと集めて、
県内各地の人たちに向けて放送するシステムをつくっていかなければいけない。
そうすれば、ラジオはもっと活気づくと思います。
「ラジオは声のチラシ」です。
このインターネット時代に、新聞の折り込みチラシが無くならないように、
ラジオも無くならないと思っています。
ラジオで、横のつながりが生まれてきます。
ラジオと聴取者をつなぐ、行政と聴取者をつなぐ、聴取者と聴取者をつなぐんです。
彦根にあるラジオ局だから、彦根市民の交流の場になれるんです。
ラジオは「大メディア」でなく、「中メディア」だから、
地域の暮らしの役に立ち、災害時には住民の命を守り、
少数者の立場に立って欲しい。
滋賀県にも、障害を持っている方、外国人の方、高齢の方、子育て中の若いお母さん、病気の方、いろんな方がいます。
そういう方の声をすくい上げるには、京都に居たんでは出来ないんですよ。これは無理です。
やっぱり、放送局が彦根にあってこそ、地域のつながりを活かして、あたたかい町づくりのために役目を果たせるのではないでしょうか。
ラジオは聴くもの、参加して出演するもの、そしてスポンサーとなって支えるものです。
今のラジオ局は、どんどんつぶれていくと思います。
残念ながら、既につぶれ始めました。
兵庫県の「Kiss-FM」は倒産しました。
FM COCOLO(エフエムココロ)は一度倒産して、「FM802」に買収されました。
そういう時に、「私たちで支えようじゃないか」、
月に200円、300円、せめて500円、私たちが受信料を払おうじゃないかと、
幅広い意味でのサポーター制度のようなものを作って、
KBS京都やKBS滋賀放送局を支えていく動きに繋がっていけばいいなと思っています。
「この番組は無くさないで下さい」、「この放送局は無くさないで下さい」、
「この支局を残して下さい」という形で、実際にラジオを聴いてくれている方々が動き出すこと、
このことが本当に大きな力となり、なおかつ、何かを変えていくきっかけになると信じております。
集会は最後に、KBSの会社が経費削減のために滋賀放送局を移転しようとしていることに対し、
これは「閉鎖」への動きであり、市民と放送労働者が手を結んで「阻止」するために奮闘するとの集会アピールを採択しました。