消費税還付金 大企業10社に 8700億円

「 全国商工新聞 」 12月12日号の記事を 紹介します。

トヨタ自動車に、 5年間で 1兆3000億円の還付金 」 「 輸出大企業上位10社に、年間約8700億円の還付 」。

税理士・湖東京至さん( 元 静岡大学教授 ) が 消費税の輸出還付金を 推定計算しました。

野田内閣は、 通常国会に 2010年代半ばまでに 消費税率を 10% にする増税法案の提出を 狙っています。

増税されたら還付金も 中小業者の納税額も 2倍、

こんな不公平は 絶対に許せないと 告発しています。

 消費税の最大の不公平は、 トヨ夕自動車など 巨大輸出企業に対する還付金制度です。

大企業などは 消費税を 1円も 税務署に 納めないのに 巨額の還付金を もらっています。

私が 10年度の有価証券報告書をもとに これら大企業への還付金を 推算したところ、

上位10社だけで 8698億円に 上ります。

2010年度の還付金の合計は 3兆3762億円 ( 政府予算 ) で、 この額は 全消費税収のおよそ28%に 相当します。

 還付金の最も多いトヨタ自動車は 最近5年間で 1兆3000億円の還付を 受けています。

消費者は トヨタの車を買う時に 消費税を払います。

トヨタは 当然、 国内販売分の消費税を 税務署に 納めなければなりません。

しかし、 トヨタは 還付金から差し引き、 1円も 納税していません。

つまり、 国内販売分の消費税額を差し引いても、 なお 巨額の還付金が もらえます。

下請けは 転嫁できない

 一方、 中小事業者は 消費税を 完全に転嫁できないのに 納税額が発生するため、 納税資金の手当てに 四苦八苦しています。

消費税は 赤字でも 納税額が発生します。

そのため、 消費税の滞納は 国の税金の中で 常に第1位を 占めています。

巨大輸出企業は 滞納の心配は まったくなく、還付金の振り込みを 楽しみに 待っています。

こんな不公平は 絶対に 許せません。

なぜ 消費税に輸出還付金制度が あるのでしょうか

政府は 「 外国の消費者から 日本の消費税は もらえないから、 トヨタなどが 仕入れの際に 払った消費税分を 返すのだ 」 と 説明します。

ですが トヨタなどは 下請けに 消費税を 本当に 払っているでしょうか。

経済取引では 価格決定権を 持っているのは 常に 親企業です。

「 消費税分を まけとけ 」 と いわれれば その価格で 納品しなくてはならず、 たとえ 消費税分を 請求書に 書いても 元の価格が 下げられていれば 消費税を もらったことには なりません。

消費税は 価格への転嫁が 力関係で 決まる不透明で いい加減な税金なのです。

 トヨタなどの輸出大企業は 実質的に 払ってもいない消費税を 返してもらっているのです。

これは 税制を使って 輸出補助金を出しているのと 同じです。

もし、 どうしても 還付したいなら、 下請けにも 返すべきです。

 その上、 同じ非課税でも、 患者から 消費税分をもらえない医療機関社会保険診療報酬に 還付金は ありません。

ですから 病院などは 診療材料や薬に含まれている消費税分を 自己負担せざるを 得ません。

つまり 医療機関は 消費者と 同じなのです。

これを 「 にせ非課税 」 と 言います。

医師会などが 社会保険診療報酬も 輸出のように 還付金のある免税にしてほしいと 運動しているのも 分かります。

輸出還付金で 税務署赤字に

 全国の税務署のうち 消費税の還付金が 消費税の税収を上回っている赤字の税務署が 九つもあります。

九つの税務署は いずれも その管内に 輸出企業を 抱えています。

赤字の一番大きい税務署は トヨタ自動車のある愛知・豊田税務署ですが、 管内の消費税収入より 還付金額が 1153億円も 上回っています ( 2009年度分、 5%分 )。

還付金をもらっている企業は 全国で およそ15万5000社、 そのほとんどが 輸出企業です。

還付金が一番多いのは 東京の麹町税務署で 2603億円も あります。

 これらの税務署の管理運営部門は 月末までに還付金を振り込まないと 利息をつけなければなりませんので 振り込みに 追われています。

本来、 税務署の仕事は 税金を集めることですが、 こと消費税に限っては 税金を返すことも 仕事なのです。

消費増税で さらに格差

 野田内閣は 2012年の税制 「 改正 」 法案に 消費税の税率引き上げを 盛り込むとしています。

もし税率が 10%になれば、 還付金は 2倍に なります。

トヨタ自動車でいえば 2246億円が 4492億円に なります。

逆に 中小事業者の場合、 仕入れや 周辺の取引価格は 確実に 消費税分が 上がりますが、 売り上げは 横ばいか 減少する可能性が あります。

にもかかわらず、 消費税の納税額は 2倍に 跳ね上がります。

簡易課税を選択している場合は 売り上げに 一定割合をかけるだけですから 税率引き上げ分は そのまま増税になります。

もっとも、 簡易課税制度は 税率引き上げとともに 廃止される可能性がありますから、 それだけで 納税額は多くなります。

不公平は ますます拡大します。

 日本経団連が 消費税増税を提言している裏には、 税率引き上げで 大企業が もうかる仕組みが あるからです。